伊藤まさひろ世事感懐
児童を虐待から守ろう
今年1月に松戸市の小学4年生、栗原心愛さんが虐待されて死亡した事件で、父親による虐待を手助けした罪に問われていた母親のなぎさ被告に懲役2年6カ月、執行猶予5年の有罪判決が言い渡されたとのニュースを聞いて、あの痛ましい事件の記憶がよみがえりました。このような事件を再び起こしてはなりません。県を初めとする関係機関の対策は進んでいるのでしょうか。
事件後、森田知事は児童相談所、学校などの対応を検証する第三者委員会を設置して、なぜこのような事件が起こったのかを議論し、再発防止策を検討することを明らかにしました。早速、法律専門家、小児科医師、小学校長、大学教授ら8人の委員による委員会が設けられ、これまでに4回の会合が開かれました。ぜひとも子どもの虐待防止へ実効性がある提言をまとめてほしいものです。
松戸の事件では柏児童相談所が女児の長期欠席を知っていたのに、担当者が女児の自宅を1回も訪問しなかったなど対応が問題になりました。6月県議会での森田知事の答弁では、こちらも改善が進められているようです。事件後の緊急対策で、児童相談所への経験者採用や児童福祉司などの専門職員の増員を現行の計画より1年前倒しして進めるとともに、職員の研修にロールプレイ(複数の人がそれぞれ役を演じ、疑似体験を通じて、ある事柄が実際に起こったときに適切に対応できるようにする学習方法)を導入するなど、より実践的なカリキュラムへの見直しを行い、経験年数の短い職員の虐待対応力を高めていくそうです。
松戸の事件では、父親による児童相談所、学校への強圧的な言動が対応にあたった職員らをひるませました。このような場面に対応するために、県内のすべての児童相談所に検察職員または警察OBが配置されたということです。
対応にあたる児童相談所などの体制強化ももちろん必要ですが、児童虐待の芽を摘み取るために、周辺の住民による監視の目が重要です。児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合、関係機関に通告するのは国民の義務で、3桁の通報専用ダイヤル「189(いち早く)」も用意されています。痛ましい事件を風化させず、官民一体となって児童を虐待から守りましょう。