伊藤まさひろ世事感懐

スマート農業

2020東京五輪のチケット抽選申し込みが締め切られました。56年ぶりの東京での五輪。私も、ぜひとも会場まで足を運んで、世界のアスリートを応援したいと思っています。

15日に改選後初の臨時県議会が開かれ、農業水産常任委員会に所属することが決まりました。農業は我が国を支える基幹産業です。農業の将来をしっかり見通したうえで、本県農業の振興のための施策を議論いたします。

農業従事者の高齢化、激化する産地間競争など、農業を取り巻く環境は決して安易なものではありません。その中で、最も対応が迫られているのが高齢化による農業従事者の減少問題でしょう。統計によりますと、2017年の農業従事者の平均年齢は66.7歳で、2000年当時の61.1歳と比べ、大きく上昇しました。これに伴って農業就業人口も減少を続け、2000年当時は389.1万人だったものが、2017年には181.6万人まで減少しています。千葉県も同様で、2015年の統計では11万4221人で、5年前の4分の3に落ち込んでいます。その61.7%が65歳以上と高齢化も進んでいます。

農業従事者の高齢化や減少に対処する方法として今、注目されているのがスマート農業です。スマート農業とはロボットやICT(情報通信技術)、AI(人工頭脳)を活用した農業を言います。これまでも耕運機やトラクターの導入などで自動化、省力化が進められてきましたが、人間が判断しなければならない場面が多く残されていました。これをAIやICTに任せようというのがスマート農業です。

スマート農業の登場でこれまでの農業ががらりと姿を変えると言われています。農機会社や大学で開発が進められ、既に農業現場に導入されているのがスマートトラクターです。GPSを搭載し、人が乗車しなくてもタブレットで運転操作ができる優れものです。パソコンに必要な情報を打ち込んでおけば、自宅にいてもトラクターが勝手に田畑を耕してくれるという時代も遠くありません。

ドローンで空から農地や栽培植物を撮影、AIで状況を分析し、肥料や農薬の適切施肥、散布に役立てるシステムはアメリカやヨーロッパで盛んに取り入れられています。収穫にもスマート農機が開発されています。イチゴやトマトなどを選果し、収穫に適したものを自動で穫り入れます。

スマート農業の先進国がオランダです。1980年代、価格の安い農産物の大量輸入で苦境に陥った自国農業を救うために、国際競争力の高い農産物を生産しようとスマート農業を推進しました。今では、約8割の農家が自動制御システムを搭載したコンピューターシステムで施肥や給水を行っているそうです。温度や湿度、二酸化炭素濃度などをセンサーで24時間管理し、適切な栽培環境を保持する巨大ハウスの建設などのスマート農業を推し進めた結果、オランダはアメリカに次いで世界2位の農産物輸出国になりました。

スマート農業の欠点は導入に多額の費用が掛かること、スマート機器運転の知識を一から蓄えなければならないことなどです。しかしながら、我が国農業の最大の懸案である農業就業人口の減少に対応するためにも、スマート農業の開発、農家への導入促進を図るべきです。国や県の施策を注視していきたいと思います。